素材となる土佐和紙

素材となる土佐和紙

いしはらさんとの出会い

私たちひだか和紙は、昭和に手漉きから機械漉きへ転換した製紙会社です。以来、コウゾ(楮)などを原料にした土佐和紙を機械で漉いています。世界で最も薄い和紙・厚さ0.02ミリの典具帖紙も漉いていまして、国内だけでなく世界の文化財修復分野で知られるようになりました。

私たちの紙を糸にして織るという用途は、知る限り初めてのことです。メーカーとしては、紙は素材ですので、新しい使い方をしていただき、和紙に触れることのなかった方の目にも留まるのは、ありがたいですね。和紙を貴重な伝統品として扱うのみでなく、生活の中で、そして新しい使い方を探していただけるのは、皆さまの想像以上に、本当にうれしいことなんです。ご要望があればまた新しい製品が生まれる可能性もあります。

アナログ感覚の機械漉き和紙

高知は全国有数のコウゾ産地で、同時に、さまざまな原料植物を使い分けます。土佐紙布は、品質を吟味したタイ産コウゾをご提案しました。高知産よりもさらに繊維が長くしなやかなので、やわらかくて腰の強い薄紙が作れます。しかし、どのコウゾであっても、乾燥した原料を仕入れ、紙にするまでの工程は、大変手のかかるもの。というのも、漉くのは機械ですが、そこに至る処理は、手漉き工房と同じことを大規模にやっていて、人の手が必要な作業が多いのです。このような薄紙を機械で漉く技術も、高知で開発されています。

紙を漉く速度も、皆さんが驚かれるほどゆっくりしたスピードです。技術的には薄い紙を漉くほうが難しく、この典具帖紙は時速300m、人が歩くよりもずっと遅い速度になります。アナログな機械で、毎日の微調整が欠かせません。抄紙は私を含めて3人が担当して、ムラのなさや色合いなど、目視でも仕上げをチェックしています。

私ごとですが、数年前に建設業から転職しました。修復用紙・掛け軸の裏打ち用紙・ちょうちん用紙・ちぎり絵用紙・障子紙などを抄いています。同じものづくり系ながら、繊維を加工してさまざまな厚さを漉き、染めたりもする和紙づくりには、他の製造業とは違う雰囲気や魅力があると感じています。

半透明に透けるコウゾの薄紙

土佐紙布に使う典具帖紙は、薄さで知られる典具帖紙のなかで、中ぐらいの厚さを持っています。よりをかけて糸にするためには、ある程度の強度が必要なのです。典具帖紙は、漉く手前の最終段階で「こぶり」という、水中で揺すってコウゾの繊維から肉を限界までそぎ落とし、骨だけ残すような作業をするのが特徴です。渦を巻くように漉くのも特徴。これらによって薄く半透明な、「カゲロウの羽」と呼ばれる紙が生まれます。繊維が長くて絡みの強いコウゾならではの表現方法で、薄くてもしっかりした紙です。

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